最長走行客車列車 急行【高千穂】


今回は機関車牽引の急行客車列車の急行【高千穂】についてです。
14両編成のうち、指定席は食堂車を除いて4両、残りはすべて2等自由席と言う今ではあり得ない編成です。

上の車両は佐世保⇔伊万里⇔有田を結ぶ全長93.8qの第3セクタ松浦鉄道(MR)で、前身はJR松浦線です。
急行【高千穂】と因果関係はありませんが、【高千穂】亡き後の約半世紀後の今、九州の西北の鉄路を1両編成でモクモクと走っているワンマンディーゼルカーの姿です。



      

はじめに
   この年季の入った高千穂名の愛称板は急行【高千穂】に実際使用されていたもの(除く.急行愛称板)です。
急行【高千穂】は東京駅から東海道・山陽・日豊本線(!)経由で西鹿児島駅に行く当時の日本最長距離1,595kmを走リ抜けた客車列車でした。
昭和31年11月のダイヤ改正で【高千穂】として独立した急行列車となり、昭和50年3月の新幹線博多開業に伴い惜しまれつつ(?)廃止になりました。
【高千穂】の非凡なところを順を追って説明したいと思います。
時刻、編成などのデータは日本交通公社発行の1961-10月の時刻表に基づいています。

走行距離/所要時間
走行距離:1,595KM(東海道本線・山陽本線・日豊本線経由)
所要時間:(下り)29時間11分  (上り)28時間50分
東京駅⇔西鹿児島駅間の主な駅と到着時間は以下の通りです。

主な停車駅下り(35レ)↓出発時刻上り(36レ)↑出発時刻
東京駅
14:35発
16:50着
横浜
15:02
16:25
小田原
15:48
15:37
名古屋
20:04
11:39
京都
22:16
9:26
大阪
23:00
8:40
岡山
1:59
5:53
糸崎
3:44
4:22
広島
5:24
2:45
下関
9:27
22:32
小倉
9:51
21:58
別府
12:22
19:28
大分
12:49
19:08
延岡
15:15
16:21
富高
15:53発
15:53発
宮崎
17:08
14:47
都城
18:11
13:42
西鹿児島
19:46着
12:00発

上り、下りの列車共に、目的地に行くのに3回すれ違っている(↑緑色の部分)のが見て取れます。

◇1回目
   小田原・横浜間の東海道線複線区間すれ違い
◇2回目
   糸崎・広島間の山陽線複線区間すれ違い
◇3回目
   日豊本線富高駅(現:日向市駅)にて単線区間による駅での交換

列車編成(昭和36年10月現在)
  ←急行35レ西鹿児島行き急行36レ東京行き→

荷物 10 11 12 13 14
非扱 指ロ ネC ハネ ハネ

・荷物車、1、2、6〜10号車は東京−西鹿児島
・3〜5、13号車は東京−大分
・11、12号車は東京−宮崎
・14号車は下りは東京−門司、上りは飯塚−東京

  指ロ=1等車指定席  ロ=1等車自由席  ネC=1等車C寝台
  ハネ=2等寝台車     シ=食堂車           ハ=2等車自由席

◇特記
【高千穂】の行先は下りは東京→西鹿児島なのですが、上りはもう1つ始発駅が加わり、西鹿児島・飯塚→東京となります。
上りに加わる車両は筑豊本線の飯塚発で、【高千穂】の前を走る筑豊線経由の急行「天草」(京都⇔熊本)に連結されています。
九州の入口の門司で1両だけ「天草」から切り離し、【高千穂】の先頭車両として連結されて【高千穂】は「天草」より6分先行して門司駅を発車して東京に向かいます。
なお下りの【高千穂】は最後尾1両を門司で切り離しますが、切り離された後の車両の動向は不明です。
多分ですが筑豊本線経由の普通車に併結または回送で飯塚に行き、上りの「天草」に連結されたものと思います。

牽引機関車について
【高千穂】を牽引している機関車は、電化進捗状況、交直デッドクロス(交流/直流の切替)区間走行などにより4回程度交換しているものと思います。
以下はこちらの想像です。
・東京〜糸崎?:EF58(当時の代表的な直流電気機関車)(クリック)
・糸崎?〜下関:C62(非電化路線の幹線向け蒸気機関車)(クリック)
・下関〜門司:EF30(本州直流/九州交流用の交直両用電気機関車、関門トンネル専用)(クリック)
  関門トンネル通過のために塩害防止用のステンレス板張り付け
・門司〜西鹿児島:DF50(今は採用されていない電気式ディーゼル機関車)(クリック)

列車食堂メニュー(参考)
【高千穂】の1961年当時の食堂車のメニューです。
当時の物価からすると少々仕切りの高い食事ではあったと思われます。

提供時間
メニュー
価 格(円)
洋定食
150
和定食
120
昼・夜
テンダーロインステーキ定食
500
ビーフステーキ定食
300
グリルチキン定食
350
プルニエ定食
300
ランチ
250
幕の内
190
簡易定食
200
スパゲッティ・グラタン
200
いつでも
ビール大瓶
145
ビール小瓶
80
清酒 特級180ml
140
清酒 一級180ml
110
コーヒ−
50
紅茶
40
カレーライス
100
ライス・パン(バター付)
25
菓子・果物
時価
(注)1人1回の飲食代金301円以上は遊興飲食税が課税されます。

最後に
今から去ること半世紀以上前には、狭い日本を1昼夜以上かけて【高千穂】が走っていたことに驚きです。
自由席主体の夜行客車列車で、始発駅にひたすら並べば座席を確保することは可能ですが、途中駅から乗車する場合は通路にも人があふれて乗るだけでも大変なことだったと思います。
さらに盆暮の混雑、夏季の冷房のない蒸し風呂状態の車内など・・・・。
それでも客車列車特有の正確なジョイントを刻みながら走る姿は、古き時代の1ページを彩るのに充分だと思います。

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